住む
安立直仁さん
伊豆熱川安立農園
東伊豆町民インタビューNO.41 安立直仁さん
安立さん、こんにちは!本日は東伊豆通信インタビューのご対応誠にありがとうございます!
よろしくお願いいたします。
まずは、安立さんの生い立ちヒストリーを伺えたらと思います。
生まれは東伊豆町の奈良本です。
熱川小学校はかつて木造でした。
稲取高校では美術部で油絵をやっていました。絵を描くのが好きだったんです。
高校を終え、親には4年間だけという約束で陸上自衛隊に入隊しました。
御殿場市の駒門駐屯地での勤務が主でした。
自衛隊の居心地がよく結婚をしたこともあり、定年退職まで勤めることとなりました。
現在は家業に就農し、猟友会などにも所属しています。
ありがとうございます!
自衛隊ではどのようなお勤めだったのでしょうか?
自衛隊では衛生隊員として、応急処置教育などを担当した他、地対空ミサイルや重機のオペレーターを兼務していました。
衛生班の班長を務め、最終職務は人事の部署の長である、中隊先任上級曹長を担い令和元年の8月に定年退職を迎えました。
最後の役職はこれまで携わってこなかった領域で隊員たちの成績をつけたり、後輩たちの転職、仕事の悩み相談などのケアをするような部署での仕事でした。
ご定年を迎えられてからの東伊豆町へのUターンだったんですね。
奈良本へ戻ってから就農されたというお話でしたが、自衛隊とは全く異なるお仕事になったのかなと思うのですが、どのようなお気持ちでUターン就農を決めたのでしょうか?
私が長男だったので、家業である農業を継ぐイメージは漠然と昔から持っていました。
自衛隊を定年退職する少し前に長女が農業に関心を持ってくれて、静岡の農林大学校に進学したことをきっかけに、私も農業に本腰を入れるイメージを持ち始めました。
しかしこのころ専業農家であった父が他界し、技術の継承はできませんでした。
面積としては合計約90アールの農園を所有しています。
柑橘類をメインに取り組み、柑橘の収穫がない時期で野菜を収穫しています。
柑橘の種類としてはポンカンなど、中晩柑類を中心に育てています。
早期に自衛隊を退職するという選択肢もありましたが、前職は福利厚生が安定していましたし、農業だけで生計を安定されられるのかが心配でした。
公務員という肩書がなくって自由な気持ちが得られるようになるまで一年ほどかかりましたが、今は気分が楽になってきました。
ただ、就農して間もない時期は、給料という考え方が急になくなったので、そのギャップに苦しみました。
前職では上からの司令に従って仕事に取り組んでいましたが、今は自分が一個の組織にならないといけないんだという意識を持つようになり、一緒にやっているもともと農業やっている母との意見の相違もありますがうまく折り合いをつけてやっています。
また就農する前に予備知識として、磐田市の農林大学校で就農者向けの短期講習に通いました。
他にも娘の学生時代の研修先だった農家さんに柑橘についての実地でのノウハウを学んだり、実践の知識を蓄えました。
野菜は、農林大学校の知識よりも地域の気候や農業形態が異なっていたので、母の教えのほうが現場では有効な知識が多かった印象です。
セカンドキャリアを歩まれている安立さんのたゆまぬ努力が伺えるお話をありがとうございます。
Uターンされて、地域とはどのようなつながりを持ちながら暮らされているのでしょうか?
いざUターン就農して農協の青壮年部に入ってみると、同級生や一時期所属していた消防の仲間も所属していたので、帰ってきてから農業という領域で友人たちと再び繋がり直すことができました。
青壮年部に所属したことで、今の仕事でもサポートしてもらうような機会も生まれています。
その他には区の道路環境整備委員になりました。
公共区画である道路の整備・清掃・草刈りを毎月第三日曜日に行う活動を同じ委員の方たちと共に行っています。
農業という仕事は下手すると一日家族以外と喋らないということもあるので、外に出ようという考えを持っているのと、自分が生活していく上で支障がないなら役職についてコネを広げるのもいいのかなと思いやっています。
たまたま農協の朝市で出会った先輩に師事を仰いで猟友会にも入りました。
様々な地域貢献を通して、地域のみなさんとの関係構築も大切にされているんですね。
猟友会にも所属されているということでしたが、やはり安立さんの農園でも獣害被害が出ているのでしょうか?
そうですね。
動物の殺生に抵抗はありますが、金網や電気柵など様々な対策を打ちましたが、ことごとく突破されてしまい、農家として生きていくには減らすしか選択肢がないなというところに思い至り、去年(2020年)の冬に狩猟免許取得しました。
師事を仰いでいる方の監督のもと、罠猟を練習した去年は、鹿7頭、猪3頭を捕獲することができました。
猟期となる今年の11月からは本格的に罠猟を始める予定です。
地区特有の要因で高齢化が進み放置農園が増えており、雑草や雑木など鹿や猪が隠れるような場所が増えて被害が拡大していきます。
害獣被害に戦わずして勝つ方法としては、隠れる場所を作らないことや、決まった時間に日々見回ることがあげられると思います。
自衛官時代の仕事でも定期的な見回りが、相手に対しての抑止力になることを知っていたので前職の知識や経験が生きているとも言えますね(笑)
ちなみに賀茂地区で狩猟をやっているのは、農家の害獣対策、狩猟が本業の方、これからやろうとしている方がそれぞれ1/3くらいの割合でいるような印象です。
今のお仕事に前職での経験が生かされているというお話はとても興味深かったです。
既存のやり方にとらわれずに、様々な分野の知識を活かしながらこれからの縮小社会を捉え直すことで未来が開けるヒントだと思います。
それと安立さんは、サバゲー(※)関係の趣味もあると伺ったのですが、そちらはどういったものなのでしょうか?
(※)サバイバルゲームの略
そうですね。
趣味でサバゲーをやっている傍ら、サバゲーグッズの作成などもしています。
自衛官時代に使っていた本職の道具のデザインを用いたグッズになっていて、サバゲーの道具とは異なるところもあるので、趣味の人たちから愛用いただいています。
現在はグッズデザインを業者発注し販売しています。
現役時代から道具の補修などもやっていたので、今は縄の補修や農具の作成なども行っています。
先日行った狩猟講習でも、捕獲数が多い人達はみんな手作りしたものや既製品をカスタマイズしたような道具を使っている猟師さんもよく見受けられますよ。
経験があるから工夫できる。
まさに好きこそものの上手なれですよね。
前職での経験とサバゲーという趣味とが結びついて、安立さんのオリジナルブランドができあがったんですね!
最後の質問となりますが、現在挑戦していることや今後取り組んでみたいことをお教えいただきたいです!
今取り組んでいるのは園地の整備など現状の課題を解決し、より良い柑橘を作れるよう工夫していくことと、娘が就農する際の基盤を整えておこうという2つですね。
世代的にガンガン稼いでというところでもなくなってきたので、今の状態の維持をしていくことなのかなと思っています。
また自営業となったので、気をつけなきゃなと思うことは怪我をしないことです。
効率が悪かったとしてもできるだけ安全に、時間かかっても着実にやっていくことが大事だと考えているので、慎重に日々の作業に取り組んでいます。
お話を伺い、自衛隊のお仕事を終えた安立さんは、今まさに第二の人生のスタート地点に立たれているんだなと感じました。
農業という新しい領域に自衛隊という前職での経験を活かされている安立さんのお話から、これからの生き方のヒントをいただけました!
本日は取材にお答えいただき誠にありがとうございました!!
取材先紹介・写真掲載協力:鳥澤善久さん(北川)