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三枝美保子さん
稲取高校校長
東伊豆町民インタビューNO.53 三枝美保子さん(後編)
前編では三枝校長のご経歴や稲取高校が稲取高校たる理由、地域の特色を活かした稲取高校の在り方について伺ってきました。
引き続きお話を伺っていきたいと思います。
東伊豆町を含めた賀茂地区に少子化の流れがあると思いますが、賀茂地域にある高校の存続など今後どういう展開になることが予想されているのでしょうか?
稲取高校で地域連携を進めてみて大切だと感じたことが、今提供している機会が純粋に生徒のためになっているのかという原点に立ち返ることです。
生徒にとっても地域にとっても大切な高校であるということ、高校として大切なことを突き詰めていくことを忘れずに教育活動を進めていきたいと思います。
地域のみなさんが純粋に高校生たちを応援してくれているこの地域の素晴らしい土壌を体感できたことで、私はその大切さに気が付くことができたので。
生徒さんたちにとって本当に必要な機会なのかという問いに対してひたむきに向き合い続けることが、これからの高校には今まで以上に必要になってくるということですね。
本質を問い続けることはとても大切なことですが、ご苦労を伴うことになるかもしれません。
でも、その高校の姿勢は生徒たちはもちろん地域も感じ取ることができていると思います。
ここから、稲取高校の真価がさらに問われることになってくるんだろうなということをお話から感じ取らせていただきました。
せっかくの機会ですので表向きには出てこないような先生たちのご苦労や、我々一般人は知りえない学校業界の常識などお教えいただけないでしょうか?
意図する答えになっていないかもしれませんが、高校の教員はそれぞれ受け持つ教科の専門の領域を持っているので、教員たちの個性が際立ちやすい環境だと思っています。
他には広報活動にも力を入れていて、公立高校でも県の教育委員会が主催となってパンフレットのデザインや、学校紹介動画、説明会のスライドについて意見交換を行うような機会が設けられたりしています。
稲取高校のパンフレットは教員たちから意見をもらいながら私も一緒に作らせてもらっていて、在校生の声や、体育祭などの楽しい雰囲気の写真、稲取高校に入ったら自分が変えられるかもしれないといったことを感じ取ってもらえるようなデザインにして、稲取高校らしさが伝わる内容に編集しました。
中学生向けの説明会ではアンケートをお願いしたのですが、中学生や保護者から、こちらがお伝えしたいと思ったそれらの意図を受け取ってくれたことが伺える回答が得られて、確かな手応えを感じています。
高校は社会の出口につながっている場所で、教員はその責任を全うする立場であるということに意義を深く感じています。
本校で実施している進路のための面接練習は生徒の変わりようが顕著でして、努力して自分の進路を実現する姿を間近で見られる時つくづく教師冥利に尽きるなあと思うんですよね。
卒業式で成長した生徒を送り出すときなどは「教員をやめられないですね〜」とよく教員一同で話をしているんですよ。
思いを持って入学する生徒が増えていったらさらに稲取高校は充実した高校生活を送ることができる学び舎になると思います。
高校の生活は、入学当初では思い描いていなかった3年間が過ごせます。
私たちはその子たちの可能性を広げてあげたいし、その仕掛けを沢山用意してあげたいんです。
ご苦労もあるかと思いますが、先生というお仕事がとても意義深いことが大変よくわかるお話を伺わせていただきました。
生徒さんたちや保護者のみなさんも先生方のそういった姿勢を感じているからこそ、地域から愛される稲取高校があり続けているんだと感じました。
それでは、三枝校長が感じてらっしゃる地域連携の可能性や地域に期待していることをお教えください。
今年度新しい試みとして、静岡県立大学の観光ゼミに生徒たちが参加させてもらったり、静岡大学の学生さんや先生にお話をしてもらったりという機会を設けさせてもらったのは、1年生に進学クラスを新設したことがきっかけで、進路意識を高めてもらうと機会とするためでした。
しかし、東伊豆で暮らすだけでは出会うことのない大学生とつながれる機会は生徒たちにとって新しい視点をもたらすことができるということがわかってきました。
進学する、しないに関係なく、大学生たちの地域活動に対する思いや社会貢献から得られる学びを共有してもらうことが生徒たちにとっての刺激になっていると感じています。
ナナメの関係である大学生のような年齢の近い大人の存在が大事で、困ったら気軽にちょっと相談できるような間柄の人が生徒たちに増えたらいいなと考えており、きっとそれは大学生たちの内省にもつながることかもしれないし、自分の期待していた一方通行の効果だけではないお互い高め合える効果がありそうなので、地域というキーワードでつながる高大連携の可能性について探っていきたいですね。
これからの稲取高校の強みはオンライン上にも可能性を見出すことができてきています。
遠隔でも生徒たちの成長をサポートしてもらえるようなつながりを作ることが、交流する経験で得られるだろうし、生徒たちの視野を広げる機会を作っていけたらいいなと思っています。
私は高校時代に得た価値観がこれからの生徒の人生に活きる力になっていくと確信しているため、生徒たちには高校に通うことで、自分の中にある固まった価値観を再構築してもらいたいと思っています。
今後も多くの経験が得られる機会を設けて、生徒たちの前向きな気持ちを引き出すようなサポートをしていきたいですね。
高校生に限らず、身近にナナメの関係となる存在がいることって大人になってもとても大事だと思っています。
大人になれば自分で環境を求めることが出来ますが、その体験を高校生だったり若い時期から得られて、その大切さに気づけていることはその後の人生に大きく影響してくるでしょうね。
最後に三枝校長が地域に求める高校生との関わり方がありましたら、お考えを伺わせてください。
これは私自身も肝に銘じていることなのですが、彼らは今は高校生ですが、近い将来には、彼らと一緒に何かやることが出てくるはずの「担い手」になる存在です。
地域の大人たちには若い人たちに対して寛容であってほしいと思います。長い目で見たときにいつか手を取り合う存在としてみんなで育てていこうという気持ちを持って、彼らのやりたい気持ちを受け止めていただけたらいいなと思っています。
また、大学がないことで進路相談の機会が限られてしまっているということがこの地域の弱みだとされてきましたが、実は多様な分野の大学がこの土地をフィールドに関与されているので、オンラインの交流も取り入れながらそれらの大学との連携を深めることで高校の強みへと価値の転換が起こせそうな気がしています。
また、本校は地域と高校の双方向コミュニケーションが取れており、自然と地域の人が行き交うコミュニティスクールなんだなと感じていて、町が高校生の活動を大切に応援しているので、高校側としても地域の現状を把握しながらこの文化を大切にしていきたいです。
子どもたちの眠っている才能を引き出してあげたい、そんな思いを持ちつつ、地域の人が生徒と関わることで彼らに変容が起こる現場を何度も体験してきました。
ありがとうって言われたり、認めてもらえるのは大人でも嬉しいことで、人の役に立った、認めてもらえた、間違ってないということを確認できると安心するので、子どもたちもきっとそうなんだと思っています。
例えば生徒たちにコミュニケーションの仕方を身に着けてもらいつつ、地域の積極的な受け入れ力で見守りながら、それらを使う経験をサポートしてもらえる地盤があるのが稲取高校の魅力だと思っています。
地域の事業者さんに生徒を受け入れてもらうインターンシップや、地元の企業説明会もとても充実した生徒たちの成長の機会になっています。
地域の中にも思いを持った方がとても多く、被服食物部の「あったかふぇ」などに共感し、食育の重要性を高校生にも伝えたいという方もたくさんいらっしゃることを知りました。
また、高校で自分を変えたいという願望を持った生徒も多いなと感じていまして、高校の3年間という期間は成長の幅も大きい大切な時期だと思うので、できる限りいろいろなことにチャレンジし、自信を持って巣立ってもらいたいですね。
地域の特性と生徒たちの無限の可能性と私を含めた教員の願いをかけ合わせることで稲取高校の未来がさらに明るくなると信じています!
最後に宣伝なのですが、稲取高校の様子をインスタグラムで発信させてもらっています。
さりげない日常を切り取りつつ、本校が見せたい情報を発信していますので、ぜひともご覧いただきたいです!
https://www.instagram.com/inatorihighschool/
プレーパークやつるし雛の取り組みをはじめ、地域の特色を活かした取り組みを投稿しています。
SNS委員会を作って生徒たちの目線で投稿してもらい、部活の発信もさせていただいております。
公立高校にさらなる個性の追求が求められる今、すべてのタイミングが重なってこれからの稲取高校の理想像が形作られていっているんだなということを校長先生のお話から感じ取ることができました。
さらなる魅力化に私自身ご協力したいと思いますし、きっと地域の皆さんはさらに強い思いを持ってらっしゃると思います。
子どもたちを育んでいこうという想いの輪が地域全体に広がったとき、この町がどうなるのか、想像しただけでもワクワクしますね!
三枝校長、本日は夢の広がるお話を伺わせてくださり誠にありがとうございました!!