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太田長八さん
東伊豆町長
東伊豆町民インタビューNO.43 太田長八さん
本日は東伊豆町の太田町長にインタビュー!
この度はインタビューへのご対応ありがとうございます。
町長という立場からどのように東伊豆町を見てこられたのか?太田町長ってどのような方なのか?などお話を伺っていきたいと思います
まず、町長の生い立ちを伺ってもよろしいでしょうか?
私は稲取地区の出身で、大学卒業後にUターンし、城東地区に婿として入りました。
住宅をメインで設計する設計事務所の仕事を経て、町議会議員となり議長を務め、町長となり4期続投し今に至ります。
それまで稲取地区と城東地区の両方に縁が濃い町長はいなかったので、私が選出されたのも時代の要求だったのかもしれません。
町長となった当初は、前町長の退任が急だったため心の準備が整っていませんでしたが、人のつながりを大切にしてきたことで培った今の人間関係を思えば、町長をやれてよかったなと感じています。
稲取地区と城東地区両方に縁を持っていた初めての町長だったんですね。
今のお話を伺って、太田町長は町長になるべくしてなられたのだなあと感じました。
町長の任期中はどのような取り組みを進めてこられたのでしょうか?
若者に政治に対しての興味を持ってもらいたかったので、「オープン町長室」という町の誰もが、私との話し合いが可能な場を設けました。
町の現状に関心を持ってもらえたという思いと、東伊豆町に住む人の声を直接聞きたいという思いから開いています。
その影響もあってか政治に感心が高い若者が見受けられるようになりました。
そんな若者たちは、この町をなんとかしようという気持ちを持ってくれているので、オープン町長室に積極的に参加してくれていた人たちには一層の期待感を抱いています。
また、子育て支援も充実させてきました。当時は先進的だった給食補助を導入したり、放課後児童クラブ、共働きの方たちが東伊豆町で安心して働ける環境を整備してきました。
また、若い力が町を変えるという信念を持っているため、大学生の受け入れを積極的に行ってきました。
現在、「包括連携協定」を4つの大学と、「人材育成協定」を1つの大学と結んでいます(2021年12月時点)
外の新しい考えを取り入れることが重要だと考えているため、大学生たちには町で新しい刺激を生み出してもらっています。
東伊豆まではどうしても長距離の移動が必要になってきてしまい学生たちの負担が大きくなってしまうという課題もあったので、大学生の地域活動における交通費を補助するという取り組みも行っています。
任期中、一番の町の危機だと感じたことは伊豆東部病院が下田に移転するという問題でした。
数少ない医療機関が稲取からなくなると、東伊豆町全体として観光的にもイメージが悪くなってしまいます。
そこで、町民を上げて「嘆願書」を提出して、なんとか移転を白紙にし、医療機関を町に繋ぎ止めることができました。
このような取り組みによって町が変わっていく様子を垣間見ることができるので「まちづくり」って面白いですよね。
ただ、高齢者の町内での細かな移動手段の確保を実現できなかったことが心残りです。
空き家問題についても関係人口と呼ばれる地域のファンは増え、実際に東伊豆町に住んでくれる人も出てきているので、対策を地道に進めて長い目で関係を構築していくことで結果が出てくることと信じています。
働ける環境作りとしては、主産業となる観光が大きな就労人口の受け皿となりますが、地域の中では働く場所という意味での「観光」に対してのイメージが良くありませんでした。
当初に比べると就労環境の改善が進んでいるように見受けられるので、これから観光産業への従事者の動態がどう変容していくのかは注目すべき点になってきそうです。
役場や農協など、昔は働き口としては人気でしたが、今は募集があまり来ない状況となってしまっていますね。
町って言葉にしたら一つですが、実際は無数の関係性の重なり合いから成り立っているため全体をプラスにしていくことって途方もなく大変なことなんだろうなと、想像してしまいました。
大変な分、いい形で町が変わっていく様子が見られたときの達成感はたまりませんよね!
お教えいただいたこれまでの取り組みを通して、町長が特に印象に残っていることは何かありますか?
商工会青年部と地域おこし協力隊だった荒武くんの開催した空き店舗を利用した歩行者天国イベント「雛フェス」が印象に残っています。
これを続けていけば町が変わっていくんだろうなという兆しが見えていました。
残念ながらコロナによって、一回だけの開催となってしまいましたが、ぜひ復活させてもらいたいですね。
「雛フェス」は商工会青年部の皆さんと力を合わせて、役場はじめたくさんの方々から多大な応援をいただいて実施することができたイベントで、自分の中でもとても思い出深いイベントですね。
町長は我々のような地域で活動する団体を応援する上で意識していることなどあるのでしょうか?
まず、地域の中で何かをやってみたいという声に対しては、一回目は応援してやってもらうことを意識しています。
一回やってみてもらい、その人が信頼できるかどうかを見極めていきます。
挑戦しないとまちづくりができないし、理想が実現できないし、やる気がある人の力をうまくまちづくりに活用することが大切だと考えてこれまで町長をやってきました。
こういった背景には信頼できる町役場職員たちの存在があります。
私の意向を理解し、迅速に対応してくれているからこその環境で、その信頼関係のもと進められる行政の力は大きなものだと思っています。
そういった挑戦を応援する機運は行政にも文化として根付いたのではないかなと感じています。
これからが楽しみですね。
変化の中に理想があるというお考えの元、様々な挑戦を寛容に応援してこられたということなんですね。
よそ者の自分からするととてもありがたいお考えですし、理想の環境だなあと改めて思います。
町長がこの町に対して、変わってほしくないと思うものや、未来に残していきたいものってどのようなものがありますか?
口は悪いけど、面倒見が良いという人の気質があると思いますが、これは町の人の良さだと思っています。
自然としては細野高原の風景が挙げられます。
地域の人たちが毎年、代々山焼きをして守ってきた景色ですからこれからも続いていってもらいたいと思います。
この町で暮らす人々の人情味と古くから維持されてきた自然の景観、どちらもかけがえのない東伊豆町の宝ですね。
自分もよそ者ながら魅力的な東伊豆の継承にお力添えできたらいいなと思っています!
今、自分の関心事が教育なのですが、これからの地域づくりと教育についてどのような可能性があると思いますか?
稲取高校には、ダイロクキッチンで夜食堂「あったかふぇ」を定期的に開催してくれている被服食物部があります。
そういった地域と関わりを深めている部活動を軸に地域との連携を進めていけたら、地域づくりと教育が活性化していくのではないでしょうか。
また、地元の産業特化した学校を目指すことに活路を見出すことができるのではないかなと思っています。
静岡県知事の意向としても地域に特化した高校教育を目指すという方針が出ています。
町の産業背景を考えると「観光科」のようなものがあったらおもしろいかもしれません。
もともとは水産科があって遠洋漁業の実習があったり、農業科というものもありました。
高校が地域色をまとったら、先生たちは大変になってしまう部分は出てきてしまうかもしれませんがうまく配慮しながら、一層地域の子供達にとって地域愛を育むことができる運用を推進していけたらいいんだろうなと思いますね。
最後に東伊豆町のこれからに期待していることを教えて下さい。
大学連携のように地域外の力を地域づくりに活かせている点などは、他の地域との差別化につながると思っているので、今後は地域内とのつながりを時間をかけて交ざり合っていった先にに期待しています。
東伊豆町は賀茂地域(伊豆南部地域)の中で唯一「過疎債」がない地域です。
過疎債を使用するまでに地域力が落ち込んでいないことを示せているのですが、逆に財政的な面で他の市町には遅れをとってしまうこともあるかもしれませんが、これは地域の活力が衰えていないという見方もできる誇るべき点だと考えています。
財政的に劣ってしまう点を、この土地で暮らす人達がチームとなって、まちづくりに取り組んでいくこと、ハードに頼らず、ソフトの力を活かしていくまちづくりが必要だと思います。
東伊豆町は過疎になるまでこれから10年かかると言われていて、逆に過疎にならないように頑張っていけたらいいなと思います。
課題は山積みですが、東京一極集中から地方分散の動きも見えてきている昨今の状況の中で、東伊豆町ならではの一極集中に負けない引力を作っていきたいですね!
太田町長、たくさんの話を聞かせていただきありがとうございました!!