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三枝美保子さん
稲取高校校長

東伊豆町民インタビューNO.53 三枝美保子さん(前編)

荒武
荒武

本日は稲取高校の校長先生を勤められている、三枝美保子さんにインタビュー。

東伊豆町に唯一ある高校である稲取高校の三枝校長のお考えや、稲取高校の現在とこれからについて伺っていけたらと思います。

三枝校長、本日はどうぞよろしくお願いいたします。

まずはじめに、三枝校長についてどのようなご経歴なのかや、教育における関心事についてお教えいただきたいです。

よろしくお願いいたします。

出身は中部地区です。地歴公民科の教員として、西部地区の高校からスタートして、結婚を機に東部地区に異動してからは、伊東市や三島市の高校で勤務してきました。

 

私の教員人生の中に一番大きな影響を与えたのは、長く担当した「教育相談」です。

教育相談は、学校生活において、対人関係や学習、生活、進路、職業選択などさまざまな側面で生徒が抱える悩みや不安を受け止め、サポートをすることです。

生徒たちを取り巻く環境は複雑になってきました。学校教育においても、単に授業で知識・技術を伝達するだけでなく、それぞれの実態に応じて、生徒の生活や人格的発達をきめ細かく援助することも重要な役割となっています。そのために、個々の生徒を十分に理解し、生徒の心に寄り添うカウンセリングマインドを持つことが必要だとされています。

そういった機会が必要な生徒たちをどのように支援できたらいいのか?を考える時間が長く、子どもたちがレジリエンス(トラブルや困難な状況の際に、逆境をはねのけて回復するしなやかさ)を身につけるための研究をされている静岡大学の小林朋子先生が、レジリエンスを高めるためには人を助ける経験を積ませることが有効であるというお話をされていたことが印象に残っています。地域に貢献する教育活動はまさにそれにあたり、大切であると感じました。

今まで勤めていた学校で、高校生たちが地元の方と商品開発をしたり、お店をブログで紹介するなどの活動を通して見違えて主体的になっていくところを見てきました。また、薄暗い通学路のトンネルに色鮮やかな絵を描いて地域の方から感謝されるなど、地域貢献を通して生徒たちが変わっていったことを肌で感じ、生徒たちが自己肯定感を高めるためのお手伝いができることに意義を感じるようになりました。

三枝さん
三枝さん

荒武
荒武

三枝校長は子どもたちの変容を肌で体感されてきたんですね。

応援している生徒さんたちの努力を間近で見てらっしゃるからこそ、壁を乗り越えていく生徒さんたちと共有できる感動も素晴らしいものなのだろうなとお話を聞きながら感じました!

それでは、三枝先生が感じていらっしゃる稲取高校の特徴や稲取高校らしさについてお教え下さい。

稲取高校は令和元年度に創立100年を迎えた歴史ある高校です。

地域のための人材を地域で育てることで、地場産業である農業・漁業などを学べる実業補習学校として設立されました。

私は今も当時からの伝統が受け継がれていると感じることがしばしばありまして、それは地域の人達が自然に高校と関わってくれていることや、行政から大切にされているという点です。

 

東伊豆町では、幼・小・中・高の教育連携の機会が設けられていて、合同で開かれる町教育委員会主催の教員研修にも高校が声をかけてもらっています。

他にも高校の教員が小学校の英語の授業や中学校の授業を見学するような機会があり、町全体で地域のこどもを大切に育てていこうという思いがあるからこその関係性だと捉えています。

そういった地域のみなさんの姿勢には、生徒たちだけでなく教員である私たちも学ばせてもらっています。

三枝さん
三枝さん

荒武
荒武

教育や子どもたちにかけるこの土地の皆さんの思いは、実業補習学校として設立されたときから育まれてきたものなんでしょうね。

これはまさにこの土地を代表する地域性のひとつなのかもしれません。

稲取高校と地域との関わりについては、「総合的な探究の時間」で積極的に機会を作ってらっしゃる印象を受けているのですが、「総合的な探究の時間」とは一体どのようなものなのでしょうか?

また貴校が目指されている稲取高校の在り方も併せてお教えいただけたらと思います。

総合的探究の時間は、令和4年度から学習指導要領に取り込まれる授業に位置づけられます。

変化の激しい社会に対応して、探究的で教科横断的な学習を行うことで、よりよく課題を解決し、自分の生き方を考えていく力を育成することを目標としています。一年生は「地域活性化」をテーマに取り組んでいきたいと考えていて、荒武さんに講演に来ていただいたのはこのような理由からです。

先程もお話しましたが、稲取高校では「総合的な探究の時間」内に、「外に学びを広げる」ことを目指していきたいと思っていて、もともと地域との密接な連携があるからこそ、その関係をもっと深めて本校の個性にしていきたいと考えています。

 

また現在、スクールミッションの作成を進めています。

まずは高校ではこういうことをやりたいという軸を地域に示すことで、本校独自の教育の魅力や、社会に開かれた高校の在り方を示していきたいと思っています。

三枝さん
三枝さん
荒武
荒武

独自性を持った公立高校が増えていったら、地域の活力がさらにみなぎることなりそうだとわくわくする一方、その現場で勤められている教職員の皆さんの適応力が求められるようになりそうだなあと感じました。

教えることという点では教科も地域のつながりも共通している点はあると思いますが、手法がまるっきり違うと思うので、地域とのつながりの領域でお手伝いできることがありそうでしたらなんでもご相談ください!

ちなみに稲取高校では、三枝校長がお話されていた「軸」をどこに設定しようとされているのでしょうか?

「達成感」や「トライしてみる」ということを生徒たちに経験してもらいたいなと思っています。

これまでもそうだったように、たくさんの「ナナメの関係」というべき、親でも先生でもない大人たちに関わってもらって、経験をさせてもらう機会、地域に出ていき社会の表面に触れてみる機会を作っていきたいです。

 

生徒たちが主体性を持ってくれる機会を作っていきたいし、発表をして意見をもらえる場など東伊豆という地域ならではの人とつながる新しい取り組みを作っていけたらと思っています。

 

高校生は未来を作る人材と言うけど、私は未来だけでなく「今」にも関わってもらいたいと考えていて、「地域の今と未来に関わる」というワードをスクールミッションに入れたいと思っています!

 

これから普通科高校改革が進み、特色化について考える流れがやってきます。

そこで教育方針やカリキュラムだけではなく、学びの本質である、子どもたちの充実感・達成感を引き出すことで信頼感を得ていきたいと考えており、中学校の進路説明会には私が自ら赴き、そこで実際に稲取高校で起こった生徒の変化や彼らの感じた達成感を中心に話をさせてもらっています。

三枝さん
三枝さん
荒武
荒武

素敵なスクールミッションですね!

担い手不足と言われている今の地域社会において高校生たちの関わりしろはきっとたくさん作ることができると思います!

さらに教育についてのお話や今後の展望について、後編で伺っていこうと思います。

三枝校長、引き続きよろしくお願いいたします!