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金田祥道さん
東泉院副住職
東伊豆町民インタビューNO.6 金田祥道さん
東泉院は言わずも名が知れた東伊豆町白田地区のお寺さんです。
そこでお勤めされているのが、今回インタビューさせていただいた東泉院副住職の金田祥道さんです。
東泉院が地域にとってどのような場所なのか?金田さんは東伊豆町のこれからをどのように考えてらっしゃるのか?などお話を伺ってまいりました!
金田さんが東泉院の副住職さんになるまでの経緯を教えてください。
私は昭和52年に東泉院の次女として生まれました。
熱川中学校から稲取高校まで出て、うちの宗門の関係する短大を出て、伊豆急行に務めました。
そこから結婚し、主人がアメリカ人で海軍だったので転勤の関係で横須賀や佐世保で暮らしていました。
あるときお寺を継ぐということが決まり、お寺を守らせていただくためには修行をしなくてはならなかったので長男が3歳のときに一年修行に行かせてもらったんですね。
それで、ちょうど10年前の主人が退役するときに、東伊豆町へ家族で引っ越してきました。
どのような思いで東泉院さんを継ぐために東伊豆町へ戻ってこられたのでしょうか?
私は三姉妹の次女だったので、若いときは誰かがお寺を継ぐだろうという感覚でいました。
ただお寺の子ということで、お寺は姉妹の内の誰かが継がないといけないとも思っていました。
子供ながらに家族が一生懸命お寺を守っている姿を見ているため、姉妹のうち誰も継がないということはありえないことでした。
そして大人になって、私が継ぐ状況となったため東泉院の住職となるために修行の道に進みました。
お寺の世界に入っていろいろな人を見てみると、志があって和を大切にすることで周りの人もお寺を大事にしてくれる。
そういう思いが大切だなとわかりました。
そのような思いを持ち、人に寄り添う先輩方を見てきたので、自分の子供も僧侶としての生き方に魅力を感じてくれたら嬉しいですね。
60歳になろうが80歳になろうが、宗門の教えに沿って生活している人がいるので、そういう人から受ける刺激が多いです。
僧侶といっても、子育てもあるし社会で暮らしていくためにどうしてもスーパーに行ったりだとか、一般の生活もしなくてはいけないので、公私を混同しがちです。
しかし、そんな中でも僧侶としての時間に一線引いて教えを守っている人が周りにいてくれたおかげで、お寺を継ぐということに関しての意識が変わりました。
東泉院の入り口。木々の間を階段で上りながら本堂までアプローチする。
お寺を継ぐことが決まり、学ぶ人から学ぶ中でお寺への意識が変わってきたのですね!
また、ご自身が大切にされている考えや取り組まれていることは何かありますか?
最初は「教えて!」とお願いされ、数人の子どもに遊び程度で教えていたのですが、最近は寺子屋として小学生・中学生・高校生の英語を教えるようになりました。
「先生」と「子ども」、「教える」と「教えられる」という立場にいられる関係性をありがたく思っています。
子どもたちに英語を教える中で経験を積んでわかってきたことは、子どもそれぞれの気質やその時の状況にあった教育方法があるということです。
以前は点数を上げるための学習のみに力を入れていたのですが、ふと、これって10年後に覚えているのかな?と思ってしまったことがあって、こちらのやり方を無理強いせずに一緒に勉強を頑張っていこう!と子どもに寄り添うような教育方針に変わってきました。
寺子屋ということで、英語教室に通っている子どもたちには、仏教行事の折には本堂に入って手を合わせてもらっています。
最近はお盆にお墓参りに来ないなど、お寺のことを何も知らない子どももいるんです。
そういった子はお寺のことを何も知らないまま大人になってしまうので、子どもの頃お寺に通ったり行事ごとで手を合わせた記憶から、大人になってまたお寺に親しんでもらえるといいなという思いがあります。
お寺での教育を通して、生活の中に自然と仏教の教えが実践されたり、それぞれ自分が持つ心の豊かさに気づいていってもらえたらと思っています。
堂内には整然と並んだ仏具の数々
お次の質問に入らせていただきます。
東泉院のある、白田という地域について教えてください!
白田地区は浜地区、矢崎地区、湯が丘地区で構成されています。
湯ヶ丘エリアに「横山」という名字のみなさんが多くいらっしゃいます。
あと「山本」さんも多いですね。
それと伊豆急の電車を撮影するスポットがよくあるので、撮り鉄がいっぱいいます!
白田川、白田地区と片瀬地区の境界を流れる。
東泉院さんでは「お寺deマルシェ」など、東泉院さんを拠点にイベント事が多く実施されているように思うのですが、金田さんが企画してお寺でイベントが開かれているのでしょうか?
しかし、お檀家さんの中に積極的な方が多いので、うちのお寺を活用していただき色々な企画を立ち上げていただいているというのが現状です!
私がアクションするというよりは、みなさんがアクションを起こしてくれているんです。
お檀家さんの中にお寺を活用したり巻き込んでくれる方や動いてくれる方がいらっしゃるので、できないこともありますが、基本的にご提案は受け付けるようにしています。
拝む仏像があり、僧侶が皆様に法をお伝えする事でお寺の役割が果たせると思っています。
私達の役目は伝えていくことなので、そのような場をみなさんが作ってくれているなと思っています。
最近では、毎週水曜日にはストレッチをするような企画が始まったり、様々な形でお寺を活用いただいています!
東泉院で開かれるお寺deマルシェの様子
これまで地域とお寺の間で信頼関係を築いてきたからこその動きなんだと思います。
お話を伺うまでは「お寺」に人が集まっているというイメージを持っていましたが、そうではなく、地域との信頼関係を築いている金田さんという「人」の寛容さにみんなが集まっているということがわかりました!
私が学んだ愛知専門尼僧堂の堂長老師であり、仏法のカリスマとして名高い青山俊董老師は、地位とか名誉とか関係なく、僧侶としての生き方を貫かれています。
地位も名声も手に入れたお方ですが、お金でなく地に足がついた生活をされているところが魅力的で、講演会など開かれた際は参加者が殺到するほどの人気です。
そういった方を見ると自分にも置き換えて日々を過ごしていかないとなと思います。
また、自分自身の物事に対する姿勢や態度というのは見せつけるものではなく、どれだけ察してもらえるか、気づいてもらえるかという努力をしていかないといけないんだなとも思います。
剃髪について言うと、宗派によっては伸ばしてもいいんですが、青山先生は「事情が何であろうと女の人が髪の毛を剃ってこの世界に入るということは、やはり男性の場合とは違った重みがあるのではないか、それだけでも覚悟を感じます。お寺に生まれたからとか、そういうことではなく、仏様が自分をつかんで話さなかったのだと思ってほしいのです。法衣を着てお袈裟をつけることを心から喜べるまで仏法に出会いなさい。」というお話に感銘を受けています。
それぞれ考え方はあると思いますが、私は髪を剃れない覚悟ではこの道を進むことはできないと考えているので、主人も檀家さんも髪を伸ばしてもいいのでは?と言ってくれますが、そこは私の譲れないところなんです。
見た目によって自分が正されている部分があると思うので、私はこのスタイルを貫いていきたいと思います!
それを律する心を育てていくことが重要になってくるんですね。
金田さんのお話から並々ならぬ覚悟を感じ取ることができました。
最後に、東伊豆町や白田地区に希望を感じているところ、これから取り組んでいきたいことについてお教えいただきたいです!
※一国は、一人の賢者が存在することによって興隆し、また、一人の賢者を失うことによって、衰亡する。(蘇老泉「管仲論」)
魅力的な“モノ”だけが地域の魅力ではないと考えています。
青山老師のように尊敬できる人がいることで尋ねられたり行こうと思える場所もあります。
白田という地区はそういった意味では、奥様方にパワーがあることを感じています。
パワーのある人にはパワーのある人たちが集まってきます。
女性陣が頑張ることで、白田の結束力が強まっていると思います。
これからは次の世代である私の子供の世代に対してどのようにアクションしていくのかが課題になってきます。
今年の2月には白田区の人が協力してくれて、初めてここで豆まきをしてくれました!
子どもたちに地域を楽しんでもらいたいという大人たちの思いから、子どもたちはみんな喜んでくれていました。
2月に行われた節分イベント
東泉院は地域の皆さんのものなので、私達がフレンドリーに開いていけたらと考えています。
そんな大人の背中を見せていくことで、次の世代に思いをつないでいきたいと思っています!
そんな地域の大人たちの背中を見て、次の世代の子どもたちもきっとその想いに気づいてくれるはずです!
金田さん、東伊豆の希望にあふれるお話をたくさん聞かせてくださりありがとうございました!!